ニュースの怪(もしくは伝言ゲームの愉しみ)

2006年08月21日 公開

同じ内容を報じていると思われるのだが、ニュースと伝言ゲームはそう大きな差がない。だんだん大袈裟な表現になっていったり、オモシロ度が上がったりすることが、よくある。

ディーゼル車が無人走行

20日午前1時ごろ、津市一志町のJR名松線の線路に、ディーゼル車1両が放置されているのを近くの住民が発見した。JR東海によると、同車両は運行終了後の19日午後10時半ごろ、約8.5キロ離れた同市の家城駅構内に止められたが、乗務員が車輪止めを怠ったため20日午前零時すぎに動きだし、3つの駅を通過して約20分後に自然に停車したとみられる。

[共同通信:2006年08月20日12時35分]

この内容が、ネットのヘッドラインニュースとして3度見かけることになる。その(フォトピエールにとっての)第一報は、共同通信社だった。共同通信の記事で注目すべき点は、これだ。

  • 線路にディーゼル車が放置されているのを近隣住民が発見
  • 運行終了の午後10時半頃に、現場から約8.5Km離れた家城駅に留置
  • 留置に際して、車止めを設置しなかったので、午前0時すぎに動き出した
  • 3つの駅を通過し、約20分後に自然に停まったようだ

そのあと、他社も報じた。

無人列車、未明の暴走=車輪止め忘れ8キロ-三重・名松線

20日午前1時ごろ、津市一志町井生のJR名松線伊勢大井?井関間の踏切付近に列車が止まっていると、住民からJR東海に連絡があった。同社が調べたところ、約8.5キロ離れた家城駅に止めた回送列車(1両)が動きだし、無人のまま約20分間、上り方向へ平均時速約25キロで走っていたことが分かった。  回送列車の運転士(30)が停車の際、車輪止めをはめる措置を忘れたのが原因。同社は処分を検討しており、「再発防止に向け、関係者の指導を徹底したい」としている。

[時事通信:2006年08月20日13時10分]

時間が経過した分、内容がわかってきたらしく、情報が整理され、状況がよくわかるようになってきた。さすがに叙景的とはいえないけど(当たり前だ)。そしてポイントは、こんな感じ。

  • 伊勢大井?井関間に列車が止まっていると、近隣住民が連絡
  • 現場から約8.5Kmの家城駅からひとりで動きだし、約20分間約25Km/hで無人走行した
  • 運転士が車止め設置を忘れたのが原因で、処分が検討されている
  • 再発防止を徹底したがる

その約12時間後に大新聞が伝えると、ニュースなんてこのように変化します!!

深夜にゆっくり無人列車!車輪止め忘れ8.5キロ走行

20日午前1時ごろ、津市一志町井生(いう)のJR名松線で、無人の列車(1両)が動いているのを近くの住人が見つけ、通報した。

JR東海が調べたところ、列車は無人のまま津市白山町の家城(いえき)駅から現場まで約8.5キロ走行していたことがわかった。最終列車が通過した後で、衝突などの事故は免れ、けが人はなかった。

JR東海によると、列車は19日午後10時25分ごろ、家城駅に回送されたが、運転士が停車の際に車止めを置くのを忘れたため、20日午前0時10分ごろ、傾斜していた線路を自然に動き出した。列車は平均25キロで約30分走行、上り坂となった同市内の伊勢大井駅を過ぎた付近で停車した。この間は単線で、途中に3つの駅と、23の踏切があったが、警報機と遮断機は自動的に作動していた。列車は平均25キロ出ていたとみられる。

[読売新聞社:2006年08月21日 00時16分]

天下の読売様が言うには、このニュースはこういうことらしい。

  • 20日1時頃、名松線で無人の列車が動いているのを近隣住民が発見、通報
  • 家城駅から現場まで約8.5Km無人走行したが、けが人はない
  • 前日午後10時25分頃、運転士が車止め設置を忘れ、傾斜していた線路を自然に動き出した
  • 平均25Km/hで約30分間走行後、上り坂になった伊勢大井駅を過ぎて停車
  • 途中には3つの駅と、23の踏切があった
  • 平均25Km/h出ていたらしい

さすが、大新聞様は、格が違います。まず、通信社は「線路上に停まっているのを住民が発見した」と報じているのに、読売様は「動いているのを発見」だって。そして、平均して時速約25Kmということを、何故かしつこく繰り返している。でもタイトルは「深夜にゆっくり無人列車!」だ。時速25Kmというと、あまりゆっくりとも言えないような感じがする。ニンゲンがちょっと走っただけでは追いつかない。

それと、各社が報じる「平均25Km/h」って何だろう? 8.5Kmを20分かけて移動すると、確かに数字上は平均25.5Km/hとなる。加速とか減速を無視した数値だ。だから、鉄道の滑走能力とか重量とかを考えてみると、加減速時のかなりゆっくりな区間がわりとたくさんある反面、その分、計算値である時速25.5Kmをはるかに上回るスピードで走っていた区間もあるということだ。大新聞読売様が言うところの「深夜にゆっくり」なんていう表現は、たぶん間違っているだろう。

なのに、市民って読売新聞に書いてあると鵜呑みにするんだよな。困ったことに。まだ、だれもケガをしない、だれも大損をしない話題だったから見逃されがちでもあまりモンダイにならないと思うが、政治や経済や戦争なんかの話題でも、きっとこんな感じにテキトーに書かれているんだろうなぁ。

ちなみに、朝日は、こんな感じ。時事通信とほぼ同時13時02分に発報。サンケイは13時20分。朝日とサンケイの差は、右翼か左翼かというコトではなく、朝日では「87年の社発足以来、列車が本線上を自走したことはない」と報じているのにサンケイでは「このような話は聞いたことがなく、初めてのことではないか」と報じている。どちらもJR東海のコメントとしてだ。新聞がおかしいのか? JR東海がおかしいのか? まぁ、無人で本線上に列車を走らせちゃったJR東海は、相当おかしいけどね。

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