超分厚い!「日本全国発祥の地事典」刊行される

2012年09月04日 公開

ニッポンにおいて、発祥の地だの本家だの元祖だの、とにかく「コトの興り」を主張するヒトが少なくない。単純に「ここから始まった」という原点立ち返りのためのココロの拠り所であったり、ウチが最初だと主張することで商品選択を誘導しようしたり、その目的は様々だ。そして、それに対して、立派な石碑が建っていたり、看板に描かれていたり、商店街の街灯となったり幟旗を出したりする。

その中でも、石碑等で長年にわたり主張する意志において、碑の裏や副碑等でなぜ当地が発祥の地であると主張しているかを説明しているものを集め、その資料を転記し紙に刷ることで、この事典は成立しているようです。

日本全国発祥の地事典

届出義務もないし、強く主張することも少ないし

発祥の地であることについて、とくに審査もないし届出の必要もないし、そもそも届け出る相手が無い。発祥の地登録センターがあるわけではない。だから、表現の自由の一部として、発祥の地であることを主張するのは自由だ。それについての石碑建立だって自由で、民間企業が掲出することもあれば、地域住民有志のこともあるし、教育委員会が知らせる目的で設置することもあれば、町興しのために行政が手を出すことだってあるでしょう。

でも、それが一部の地方新聞のさらに地域欄で小さく報じられることはあるものの、全国的にニュースになることはまずない。それらを訪ねて歩いてひとまとめにしようとしているウェブサイトがあるものの、個人の趣味の領域でありいつまで続くか不明だ。資金か寿命かやる気が尽きてしまえばそこで終了となる可能性はある。

……と思ったかどうかは知りませんが、そこにある情報を利用して出版されたのか当書である(らしい)。

日本全国発祥の地事典(帯)

あの学校の発祥の地やら、あの姓の発祥の地、有名なところでは「アイスクリーム発祥の地」など、有名無名に関係無く、碑としてそこを訪れたヒトが理解できる形で発表されているものが集められている。でも、こんなことを、事典を眺めて調べようと思う需要がどのくらいあるのでしょうね? 話によると、販売ターゲットは図書館とのこと。そりゃそうでしょう、この手のニッチな情報は、今ではネットで調べようと思うことが自然な時代。

ただし、先述したとおり、それが個人サイトであったりすると、その管理者が飽きたり死亡したり資金難に陥ったりすると、前触れ無く消滅する可能性が高い。そう考えると、本にして全国の図書館で保管することで、このひとまとまりの情報が200年くらい、あるいはそれ以上の長きにわたって利用できる状態であるだろう。インターネット上の情報なんて、あまりにも不安定すぎる。

当書は本当に基礎情報のみ

参考にしたサイトには、碑の写真や位置を記した地図などの情報も含まれる。しかし当書には写真も地図も無くて、情報のみ。

日本全国発祥の地事典(本文)それについての理由は、こんな感じだろう。

  • 情報のみなのに、この分厚さで9500円+税。図版入りならば量が2倍程度にふくれるので、本自体がかなり分厚くなるか、上下巻にわかれるでしょう。そうなりゃ金額も2倍程度にならざるを得ない。
  • 地図をオリジナルで起こすのは手間。手間がかかれば費用となる。かといって地図会社に提供させればやはり費用となる。
  • 写真はそのコピーライトの確認がかなりタイヘン。

まことに残念ではあるが、写真や地図を入れてあるないにかかわらず、当書が棚から取り出され開かれる見込がかなり薄い。

実際には、自費出版の目安になったかも。参考にしたとされるサイトを見てみるとわかるが、1200件余の情報がある(その中から約1000件が参照され、他の文献等からも200件程度参照されているらしい)。それを「写真ナシ、地図ナシ」で本にするだけで、こんなボリュームになっちゃうわけだ。書籍化っていかにタイヘンなことなのかを窺い知ることができる。

ISBNも付けられ(978-4816923692)しっかり流通に乗っているけれど、きっと初版で絶版なんじゃないかという気がします。

読み物として楽しい編集ではない

本当に、基礎情報がずらりと羅列されているだけなので、考察もないし行ってきたレポートもない。周囲の状況についても説明が無いし、そもそも交通の便がどうなっているかだって触れられていない。本当に、「発祥の地情報」のみ。

不思議だよな。よくこれを刊行しようと思いついて、実行できたものだ。それが出版社であり編集者なのだろうけど。まあ、日外アソシエーツという出版社は、編集者自らが取材をしたりということなく、ネットや書籍等の情報を机上でうまくまとめた「事典」がいっぱい出版されているので、やめられなくなってるのかもしれません。

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